2015年05月25日

岩手県一ノ関の宮本永吉こけし昭和6年作/橘文策氏旧蔵品

先日はお祝いのメッセージありがとうございました。
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一緒に仕事をしている妹からも素敵なこけしケーキが届きました。
このモデルとなったこけしが...
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岩手県一ノ関の宮本永吉こけし。昭和6年作。7寸3分(約23cm)。
昭和一桁時代の「第一期こけし蒐集家」と呼ばれた橘文策(たちばなぶんさく)氏の旧蔵品。
同氏が昭和6年に一ノ関の木地師・宮本永吉を初訪問した際に入手されたこけしです。

昭和10年以降に製作された中期〜後期のものと比較すると、
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頭部の髪飾り枷(かせ)の配列の違い。
前期:3本(隙間)3本(隙間)3本の合計9本。中期〜後期:7本前後が均等に配列。
顔の各パーツが小さく中央寄りに描かれる。
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胴の菊模様はたっぷりとした太筆で描彩される。
濃赤色の染料が木地に深く染込んでいる。
宮本家(宮本惣七)による創成期のこけしに近い形態が確認できます。
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橘文策氏の著書『こけしと作者』(復刻愛蔵版昭和53年刊、初版昭和14年刊)、『こけしざんまい』(昭和53年刊)掲載の現品です。「みちのくは 遥かなれども 夢にまで〜」...と心の赴くままに詠ったのは深澤要氏でしたが、それとは対照的に橘文策氏は東北の情景や工人の様子を有りの儘に、時には分析的に綴っています。東北旅行記のページをパラパラと捲るたび(度=旅)に心は東北のノスタルジアへと駆り立てられます。
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こけしの胴底部分には「木形子洞」(橘コレクション)のラベルが貼られます。
自著『こけしざんまい』で語られる橘氏の東北こけし旅行記(昭和6年、7年の計二回)。その旅で初訪問した思い入れの深い前掲の宮本永吉こけしを含め、湊屋の家紋模様が入った佐久間由吉こけし、仙台の高橋胞吉、遠刈田の佐藤直助、佐藤松之進など、橘文作氏の旧蔵品の一部であった約1000本の名品こけしたちは現在に至るまで約50年の間、所在不明の状況でしたが、一昨年末から昨年末の約一年間に渡ってインターネットオークションに大量出品され大きな話題になりました。それと時期を同じにしてネット上では「真っ黒なこけしが70万円!」(小原直治のこけし)などの記事が掲載され、こけしに興味の無い人の間でもちょっとしたNEWSになりました。全ての出品終了後には一連の橘コレクションが四散する結果となりましたが、現在は然るべき場所で然るべき蒐集家によって大切に保存されていることでしょう。

もう一本。
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岩手県一ノ関の宮本永吉こけし。昭和10年頃の作。八寸ニ分。
鼓製作において人間国宝であった鈴木鼓堂(すずきこどう)氏の旧蔵品。愛玩鼓楽850番。
岩手県一ノ関の宮本永吉こけし昭和10年作/愛玩鼓楽850番

そして、時は巡って現在。
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(左)宮本永吉の原こけし、(右)田山和文さんによる復元こけし
以前に「MINGEI JETLINK/ジェットリンクの民芸」でこけしを頒布させていただいた、岩手県盛岡市の南部系こけし工人田山和文さんに宮本永吉小寸こけしの復元(※こけしの世界では模作の意)をお願いしました。製作の事前に原となる永吉こけしの木地形態をミリ単位まで詳細に計測されてましたが、完成品と原のこけしを並べてみたところ、髪飾りの数や表情が似てる似てないの議論をする以前に両者のサイズが大きく違ってました...ここでひとつフォローをさせていただくと、こけしの復元に関しては一概に原をそっくり模倣すれば良いこけしという訳ではありません。こけしの世界では、「伝統」や「継承」「復元」など抽象的な概念がしばし用いられ、時には作者とコレクターの間で誤解が生じます。こけしの伝統的意匠の継承と復元(写し)についてまたの機会にふれてみたいと思います。


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