2008年06月29日

ある夜の事件(後編)

(前回の続き)
今まさに目前に立っているのは、全身が汗まみれ、真っ赤に充血した目で
凶器のバールをこちらに向けた、作業服姿の見知らぬ中年の男。

さらに追い討ちをかけるように、刑務所から出所してきて、現在、警察に追われ
覚醒剤を使用しているという事実も判明。
『ひぃー、この若さで殺されるー!』 (心の声です)

とりあえず、このまま立たせておくのは危険と判断、玄関先で自分と対面する
形で座らせる。 薬物で興奮している様子なので、冷たい水を一杯飲ませる。
その間も、こちらに向けられている凶器からは目を離さぬように注視。
もし襲われた場合どうやって防ぐか? 頭の中で数通りのシミュレーションを考える。

その後、全く抵抗する気配の無いこちらに対して、ひとまず安心したのか、
多少落ちつきを取り戻した様子で、男が自分の身の上話を訥々と語り出しました。
こちらも薬物のためか、話す言葉、出来事の時系列が、かなり支離滅裂でしたが、
バラバラになったパズルのような話の断片をざっと纏めると、こんなところです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その男の名前は、山田一男 (仮名) 。 年齢は59歳。
数年前、故郷の北海道から就職するために関東まで出てきたのだが、
なかなか職にありつけない、また働いても長くは続かない。
結果、他人の家に侵入して盗みを働くこと数十回、合計で数千万稼いだとのこと。

その後、警察の御用となり、某県にある刑務所に入所すること数年。
刑期を終えた後は、千葉県のM市にある某セミナー施設 (宗教団体?) の
代表者 「先生」 と呼ばれている夫妻の世話になり、その施設に身を寄せることに。
そこで、道徳的な教義 (?) を学び、現在の自分自身があるのも、
その 「先生」 夫妻のお陰で、今でも日々感謝の念が絶えないとのこと。

しかし、その施設での生活も長くは続かなく、団体のお金を持ち出して逃走。
その後、 「先生」 夫妻に対する罪悪感のため、現在も心苦しんでいるとのこと。
「先生」 からは、盗んだお金のことに関しての咎めはなかったそうだが、
今になって会わせる顔も無いとのことで会ってないらしい。

現在は、入院中の母親から振り込まれる仕送りで、カプセルホテルに泊まったり、
時には野外で寝たりして、ホームレス的なその日暮らしを続けている。

「先生」 から社会道徳を学び、今になりやっと過去に犯した過ちを後悔している。
現在の苦しい生活 (財政面・心理面) も、過去の業から起因していると考えている。

先生夫妻や家族に対する後ろめたさで後悔の日々が続き、つい薬物に頼ってしまった。
現在使用している薬物 (覚醒剤) は、都内の某所で外国人から購入。
今回は自暴自棄になり止むを得ず使用したが、常習ではないそう。

既に覚悟 (自首?自害?) は出来ているが、誰かに自分の話を聞いてほしかった。
自分がこの世界に生きていた証のようなものを残したかった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
...と長くなりましたが、山田さん(仮名) が涙ながらに語った内容です。

【いちおうの解決?】
山田さん(仮名) の長い話を聞くこと、一時間近く経過しましたが、
その間、一向に警官が部屋に踏み込む気配もなく、また警官隊に取り囲まれている
にしては車のエンジン音も無く、家の周りが静かすぎる事に気づきました。
そんな疑問を、山田さん(仮名) に問いただすと、

「まさかクスリの幻覚か? いや、確かにさっきは車が何台か囲んでいた!
 でもクスリをやると、電柱が人に見えることもあるんです...」

結局のところ、ここに来る前に一悶着あった若者4人組も、凶器を見せたら、
一目散に逃げ出したそうで、実際には危害を加えてないらしいんです。
(その時に若者たちが落としていった財布と携帯は、しっかりと回収して来てましたけど)

最初の頃に比べ、やや落ち着きを取り戻しつつある山田さん (仮名) に、
警察も来てないようだし、もう少し休んだら出て行くようにと諭したところ、
山田さん(仮名) 、突然、その場で泣き崩れながら土下座して、

「本当にご迷惑をお掛けしました。 全部話したらだいぶ楽になりました。
 お水もとても美味しかったです。 こんな親切な方は、「先生」 にお会い
 した以来です。 今度ぜひ 「先生」 にも会わせたいです」

それから、家の外までこちらが先に出て、警察の車があるかどうか確認してから、
その後一転ペコペコと謝りっぱなしの山田さん(仮名) を無事に送り帰しました。
警察に通報はしてません。 警察は嫌いですし、時間の無駄と判断してのことです。

今回は、何事もなく帰って行った山田さん(仮名) ですが、
もしもこちらが違った対応 (叫んだり、抵抗したり) をした場合...
また、山田さん (仮名) が、ウチとは別の家に侵入してた場合...
今回とはまた違う結果になってたのでしょうか?
全ては想像の域を超えませんが、ちょっと背筋がゾーっとします。

【事件の背景に潜むモノ】
今回の事件で心に残ったことは、たまたま偶然にも変なかたちで自分と
関わりを持ってしまった、山田さん(仮名) の人生と、この人のこれから先のこと。
自分の父親と近い年齢の、職も家族も失った男が涙ながらに語った自身の半生。
被害者が犯罪者に対して同情する心理 (何効果でしたっけ?) ではありませんが、
いつか自分自身も...なかなか他人事とは思えず、事件後も複雑な心境が続いています。

社会や政治を絡めて話すのは好きではありませんが、ここ最近 「止むを得ない状況下」
で、犯罪行為に走る人達が頻繁に登場する背景には、そういった社会の歪が
もたらしている何かが原因の一端にあるのではないでしょうか?
そんな事を考えている自分自身が、山田さん (仮名) と同世代になる近い将来には、
この国はどのような状況になっているのでしょうか?
もはや他人事だけでは済まされない現状がそこにあります。

日々、TV画面の中で頻繁に流れる凶悪犯罪のニュース。
他人事とは思っていても、この日常では常に別世界への扉が開いているようです。
まさに 「事実は小説よりも奇なり」 ってところでしょうか?

しかし、先日の 「秋葉原の通り魔事件」 に、僅か30分差でニアミスしたこともあったりで、
はたして運が良いんだか悪いんだか...あまりに退屈すぎてもツマらないですけど。

また今晩も、山田さん(仮名) の訪問があったらさすがに困りますので、
しっかりと戸締りをして寝ることにします (笑)
最近は、何かと物騒な世の中になりましたので、皆さんもご用心くださいね。



jetlink_roki at 17:37│Comments(4)TrackBack(0)│カテゴリ_01:ほのぼのライフ 

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この記事へのコメント

1. Posted by kit   2008年06月29日 20:21
怖いですね。
話を聞いて欲しかっただけなのか・・・
山田さんが数日後、先生を連れてワタナベさん宅を再訪問する・・・という続きがあったりしたら5倍怖いです。
俺ならどういう対処してただろーなー、普通に隙を見て警察に通報してえらいことになってたかも!ひぃぃぃ!
今回は本当にお疲れ様でした・・・
ワタナベさんがいなくなったら俺は着る服がなくなるので困ります。
2. Posted by JETLINKワタナベ   2008年06月30日 22:49
◎kitさん
お気遣いありがとうございます。
話がしたかっただけなのか?他に別の目的があったのか?
今となってはわかりませんが、先生を連れてきて
またの訪問だけは勘弁してほしいです^^;
3. Posted by mieno   2008年07月01日 08:59
以前にアレックスものを一揃え購入したものです
それ以来密やかにブログを拝見していましたが。。。
とにかくお怪我がなくてなによりでしたが
精神的にお疲れになったのではないでしょうか
続編がない事を陰ながらお祈りしております。
4. Posted by JETLINKワタナベ   2008年07月01日 18:17
◎mienoさん
コメントありがとうございます!
アレックスシリーズもお買い上げいただきまして、ありがとうございます!

お気遣いありがとうございます!
さすがに事件後の数日は、ストレス的な疲れはちょっとありましたが、
今はおかげさまで大丈夫です。
続編あったら困りますねー^^;
ココ最近は何かと物騒ですので、お気を付けくださいね。






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